幻覚とは~統合失調症の症状の理解、対応、妄想との違い~

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仕事
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現役精神科看護師のぽむです。

統合失調症の患者さんの看護をするうえで

「幻覚」

という言葉をよく耳にすると思います。

幻覚というひとつの言葉で表されていますが、症状は患者さんによって様々です。

今回は統合失調症の症状のひとつである

幻覚」について詳しく説明していきたいと思います。

この記事から得られること

・幻覚の種類についてわかる

・幻覚への対応の仕方がわかる

・妄想との違いがわかる

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幻覚とは

幻覚は簡単にいうと知覚の障害です。

知覚は「視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚」のことを指します。

このいずれかの感覚に障害がおき、実在しない対象を知覚してしまうため、

これらを「幻視・幻聴・幻嗅・幻味・体感幻覚」と表します。

このなかでも特に

幻聴」と「体感幻覚」が

統合失調症患者さんに多く見られる症状です。

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幻覚の種類

上記にも述べましたが、幻覚は主に5つに分類できます。

幻視

実際には見えないはずのものが見えている

例:小さいおじさんなどの人、虫や動物、光

幻聴

実際に聞こえないはずの音が聞こえている

例:人の声であることが多い

幻嗅

臭いが発されていないのに異様な臭いを感じる

例:毒ガス、自分が臭い(実際は無臭なのに)、火の臭い

幻味

本来の味と異なった味を感じる

例:毒の味、すっぱい、等不快な味として捉えられることが多い

体感幻覚

奇妙な体感をする

例:脳が溶ける、顔がない

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幻覚と妄想の違い

妄想とはなにが違うの?

私も学生時代は意味の違いがよく分からずでした、、、。

実は幻覚と妄想にはちゃんと違いがあります。

上記にも述べましたが、

幻覚は「知覚の障害」でしたね。

妄想は「思考内容の障害」です。

思考の内容が誤っているのに、

その人がその内容を確信し、

他の人がそれは違うよ、と説得や修正しても訂正ができないものをいいます。

この説明も難しくて分かりづらいかと思うので、幻覚と妄想の簡単な例をあげます。

Aさん
Aさん

①Bさんは絶対私のことが好き

Bさん
Bさん

僕はCさんのことが好きでCさんとお付き合いしている。

ぽむ
ぽむ

②Aさん、BさんはCさんと付き合っているみたいですよ。

Aさん
Aさん

③そんなことないわ!Bさんは絶対私のことが好きなの!

④Cさんが私を羨ましがって私のことを嫌いって言ってくる。

①の段階ではまだ妄想とはいえません。

②のように第三者からの説得があっても

③のように訂正ができない状態を妄想と言います。

(Bさんは誠実な男性だと仮定します)

さらに実際に言われていないのに、

④のような発言があればこれを幻覚と言えますね。

幻覚の中でも今回のケースは幻聴です。

とっても簡単な例ですが、これも立派な幻覚と妄想です。

実際にこの妄想は「恋愛妄想」と分類できます。

「他社から愛されているという妄想」ですね。

入院している患者さんの妄想幻覚は複雑なことも多く、

それにより他者に危害を与えてしまったり、

治療がスムーズに進まないケースもあります。

ぽむ
ぽむ

ポイントは幻覚は知覚の障害に対して、

妄想は思考内容の障害という点です。

幻覚への対応方法

幻覚の訴えは必ずしも言語によるもので表現されるとは限りません。

空笑独語(独り言)、奇異行動などで表現される場合もあります。

幻聴が強い場合は、

声をかけても反応がなかったり、

突然無言になったりします。

幻覚への対応方法は患者さんの症状や性格などに合わせます

そのため看護の方法に正解はありません。

アプローチの方法は異なっても軸の部分は共通しています。

この軸の部分を普段の関わり方も含めながらお伝えします。

自傷他害の予防

幻覚状態が強い場合、

自分を殴ったり物で傷つける、

あるいは他者に危害を与えるケースがあります。

ですので、患者さん本人はもちろん、他患者及び医療スタッフの安全を第一に考えます。

この場合は、

当人の周りに危険になるものを置かない

他患者との距離を離す

などの対応をします。

それでも危険な状態が続く場合、

精神科病院では一時的に「保護室」という個室で過ごしていただくこともあります。

保護室についての解説はこちらの記事でしています。

幻覚の内容を理解しようとする

幻覚の内容を理解することは、

患者さんに出現している症状をより把握することにもつながります。

幻覚の内容を深く追求することで幻覚を助長させてしまうおそれもあるので、注意が必要です。

ぽむ
ぽむ

はじめは、幻聴が強くでているなと思っていただけでした。

しかし、話をたくさん聞いていくうちに、

幻聴の内容がジャニーズの時はハイテンションに、

〇〇に殴られるという内容の時は攻撃性が高くなる傾向にあることがわかりました。

このように患者さんの幻覚の内容を理解することが、今後の関わりに活かされることもあります。

否定も肯定もせず、安心を与える

学校でもよく学ぶことだと思いますが、

私たち看護師は基本的に患者さんの言動に対して否定することも肯定することもしません

ですが、訴える内容によっては、

患者さんを安心させるために否定することもあります。

患者さん
患者さん

頭の中でバカって言われるんです。

ぽむ
ぽむ

だれも〇〇さんにバカなんて言っていないので安心してください。

それは幻聴なので、その声は無視して大丈夫ですよ。

どうしても声がうるさかったら薬の力を借りましょうね。

このように幻聴を否定してあげることで、

患者さんに安心感を与えます。

それと同時に患者さんに対して、

その声への対処法を伝えてあげることも大切です。

逆に肯定することで幻覚を和らげることもあります。

患者さん
患者さん

机の上に虫がいっぱいいるからご飯食べたくない。

ぽむ
ぽむ

虫は嫌ですね!

一回机の上を拭いて虫を退治しますね

実際に虫はいないので綺麗な机をもう一度拭いただけでしたが、

その後「綺麗にしてくれてありがとね、これなら食べれる。」

と言って食べ始めた患者さんもいらっしゃいました。

他のものに関心を向ける

幻覚にとらわれている患者さんに対して、

現実世界に戻れるように話題を変えることもあります。

別の話題にして気分転換を図ったり、その患者さんが好きな話をしたり。

俺さ、もうなにもかもだめだ。自分が汚いし臭い気がして、、、

看護師
看護師

私はなにも臭いませんよ。

ん~でもさ、すごい臭うんだよ。

看護師
看護師

大丈夫ですよ。

これだと幻覚状態は一向に変わりません。

私がもしこの場面に遭遇したとしたら、、、

俺さ、もうなにもかもだめだ。自分が汚いし臭い気がして、、、

ぽむ
ぽむ

私は〇〇さんから、というよりもご飯の匂いがします。

お腹が空いてるからですかね?

今日のお昼のメニューなんでしたか?

あそこに貼ってあるので私に教えてください。

みたいな感じで話題を変えてします。

もうその話題にはさせません!という風に(笑)

初対面の患者さんの場合は

「この人なにも話聞いてくれないんだな」と思われてしまうこともあるので、

ある程度信頼関係を築けてからの方がいいですね!


患者さんとの信頼関係を築く方法について記事にしています。

よかったらご覧ください。

まとめ

幻覚は知覚の障害

幻視・幻聴・幻嗅・幻味・体感幻覚」の5つに分類される

妄想は思考内容の障害である

幻覚に対しては

自傷他害の予防

幻覚の内容を理解しようとする

否定も肯定もせず、安心を与える

他のものに関心を向ける

を軸に患者さんに合わせた対応を実施する

幻覚に対する看護は奥深く、私も日々勉強中です。

精神科は正解がないからこそ、難しく、面白くもありますよね。

それでは、また次の記事でお会いしましょう。

精神科病院での日勤について記事にしています。

よかったら併せてご覧ください。

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