看護学生が実習記録で
「患者さんと信頼関係を構築する」
といった看護計画を立てているのをよく目にします。
信頼関係を構築するって一体どんな看護をすることなのでしょうか。
また構築できたかどうか、どのように評価できますか?
精神科では患者さんとの「信頼関係」がとても大切です。
精神科病棟で働く筆者が、
患者さんとの信頼関係を築くために意識していることや実体験を記事にしました。
あくまでも精神科を経験した私なりの考えなのでご了承ください。
・実習中の看護学生
・精神科勤務を考えている学生や看護師
・新人看護師
・精神科で信頼関係が大事にされている理由
・信頼関係を構築するための患者さんとの関わり方
・信頼関係の評価の仕方
精神科は患者さんとの信頼関係が大切

精神科だけでなく、どこの診療科においても患者さんとの信頼関係は大切です。
しかし、患者さんとのコミュニケーションが基礎となり、関わる期間が長期的になる精神科では「信頼関係」がさらに重要なポイントになります。
理由はそれだけではありません。
精神科に入院されている患者さんは自身でも気づかないところで、
人に対して強い不安や恐怖、不信感を抱えています。
そして、そのような感情をうまく表現できない、伝えるのが苦手な患者さんが多いです。
そのため、患者さんとの信頼関係を育むことが、より個別性のある看護を提供することにつながります。
信頼関係を構築するための関わり方
実際に私が患者さんと関わる際に意識している主なことは3つです。
1、患者さんに関心を示すこと
2、短時間でもできるだけ多くの患者さんと会話をすること
3、約束を守ること
患者さんに関心を示すこと

新しく入院してきたほとんどの患者さんに対して、必ず自分から声をかけにいきます。
(※患者さんに休息が必要な場合や出現している症状を見て判断)
話す内容は様々です。
ここで大切なのは
「私はあなたにとって敵ではない。
関心があって話をしている。」
ということが伝わるように話すことです。
具体的になんて言ったらいいの?と思うかもしれません。
私がよく使う手法なのですが、話の最後に

(私と)話してくれてありがとうございました。
少しでも○○さんのことを知れてよかったです。
○○さんが困っていることを解決できるように一緒に考えていきましょうね。
またなにかあれば遠慮なく声をかけてくださいね 。
こんな感じで患者さんに伝えます。
何度も言いますが、全患者さんに言うわけではありません。
統合失調症でまさに幻聴が聞こえている状態でこれを言っても伝わりませんよね。
患者さんの精神状態が落ち着いているときにお話します。
もちろん、入院が長期化している患者さんに対しても定期的に話をする機会を設けています。
短時間でもできるだけ多くの患者さんと会話をする

業務が忙しいとどうしても疎かになってしまいますが、
可能な限り患者さんと話せるように意識しています。
私が1年目に密かに掲げていた目標は
「日勤の時は挨拶だけでも患者さん全員と話をする」でした。
実際、全員の患者さんと毎日話すことは難しいです。
ですが、朝の検温の時に一言だけでも会話をして
「あ、この看護師さんは話しやすいな」
という印象を持ってもらえるように心掛けています。
私がこの夏よく使った手法です。
~朝の検温時~

○○さん、おはようございます。
今日も外はめちゃくちゃ暑いですよ~。

もうそんな時期か。
ここ(病院)はクーラーかかってるからわからんな~

外出た瞬間に汗だくです。
セミも鳴いてますし…
私セミがすごく苦手なんですよ~。
○○さんは虫触れますか?

いやー触れるけど別に好きじゃないよ~!
こんな感じの内容です。
普通の雑談に聞こえますよね(笑)
9割は雑談なんですけど、私なりの工夫点があるのでぜひ聞いてください(笑)
季節を感じられる話題にする
入院が長期化している患者さんは季節の感覚が薄れていき、今が何月かも考えなくなってしまわれる方もいます。
少しでも季節を感じてもらえるような話題を提供します 。
自分の情報を伝え、患者さんの情報も教えてもらう
患者さんの情報を一方的に聞くのではなく、
まず自分のことを話すようにします。
そうすることで、患者さん自身の話も話しやすくなります。
自分の好きな人言うからあなたも言ってね!的な手法です(笑)
患者さんが身構えなくても話せる内容
必要な時はしっかりと精神症状も確認します。
ですが、日頃から何気ない会話をしていることで
「そういえば最近途中で目が覚めて…」
みたいな情報を、患者さんの方から話してもらえる場合が結構あります。
ほんの一例にすぎませんが、
このような少しの会話の積み重ねを大切にしています。
患者さんとの約束を守る

患者さんとした約束はどんな些細なことでも必ず守ります
少し大げさに書きますが、
患者さんにとって、入院生活における看護師との約束は願いの全てである場合も少なくありません。
看護師との約束が希望になっていることもあるのです。
分かりにくいかもしれないので、例を挙げます。
連勤明けに友人と遊び行く約束があります。
この約束を楽しみに仕事を頑張ろう!
約束当日、何時になっても連絡が来ない。
その日の夜遅くに「ごめん今日無理になった」と連絡が来る。
みなさんならどう思いますか?
よほどの理由がない限り、
もう二度とその友人と遊ぶ約束はしないと思います。
私ならしません。
これを患者さんの立場になって考えてみましょう。
連勤明けに友人と遊び行く約束があります。
→ 今日15時から看護師と話をする約束
この約束を楽しみに仕事を頑張ろう!
→15時までに嫌いなお風呂も行ったし、朝ごはんも昼ごはんも全部食べた!
約束当日、何時になっても連絡が来ない。
→15時になっても全然看護師さんが来ない…
ステーションにはいるんだけど、何か仕事してるな…
その日の夜遅くに「ごめん今日無理になった」と連絡が来る。
→日勤が終わる17時に「今日は話をする時間がなかった」と言われたら…
患者さんもきっと、もう二度とこの看護師さんに話を聞いてもらうのはやめよう。
と思うはずです。
患者さんによっては
「きっと私のこと嫌いだから、話したくないんだ」
と勘違いすることも考えられます。
では、15時より前に
「午後から忙しくなってしまって、
どうしても時間が作れそうにないです。
ごめんなさい。」
と看護師から言われていたらどうでしょうか。
患者さん全員とまではいかないかも知れませんが、何人かは「忙しいならしょうがないな」と思ってもらえるはずです。
少し話が長くなってしまいましたが、
大事なのは患者さんとの約束は必ず守ること。
もし無理ならば、わかった時点で謝罪すること。
そして、無理かもしれない約束は最初からしないことが大切です。
信頼関係の評価方法とは

信頼関係というのは、はっきり目に見えるものではありません。
評価しづらいのが正直なところです。
私もえらそうに書いていますが、
もしかしたら患者さんは誰一人として私を信頼していない、
一方的な片思いの可能性もありえます…
(それはそれで悲しい)
私が患者さんと関わってきて、信頼関係が成り立っているのでは?と感じたエピソードがあります。

時間があるときに話をする時間を作ってくれませんか?

厳しいときもあるけど、私のことすごい考えてくれてるなって感じる。

(病棟を)異動しないでね

色々気にかけてくれたので、私も不安なことを看護師さんたちに話せるようになりました。
このような言葉を言ってもらえた時です。
本当に嬉しく思いましたし、少しでも精神科看護師らしく働けているのかな?と思いました。
また、同じ病棟のスタッフに
「○○さん、ぽむさんと話すときはすごくいい表情するんだよなぁ」
と言ってもらえたときも嬉しかったです。
(その先輩の観察力も尊敬しています。)

信頼関係をすぐに構築することは難しいですし、
なかなか実感もしにくいです。
患者さんとのコミュニケーションがうまくいっていれば、
ある程度関係性は築けているのかな?とも思います。
まとめ
精神科に入院している患者さんとの信頼関係の構築方法は
1、患者さんに関心を示すこと
2、短時間でもできるだけ多くの患者さんと会話をすること
3、約束を守ること
信頼関係はすぐに構築されず、評価も難しいです。
働いていくなかで患者さんから言ってもらえる言葉や実際の行動、
コミュニケーションから評価していきましょう。
ぽむのおまけ

学生時代、実習カンファレンスで
「患者さんとの信頼関係の築き方」をテーマにしました。
なんにせよ経験のない私たち学生は意見もなかなか言えずに、
ゴールに辿り着けなかった記憶があります(笑)
指導者さんにテーマがおかしいと指摘されたような…(笑)
今思えばそりゃそうだ!と思えるんですけどね…。
実習を重ねていくうちに、
カンファレンスのテーマの決め方や進行の仕方も成長しました。
事前に言う内容を実習メンバーで打ち合わせしていたこともありました(笑)
団結力のある4グループだったな、、、
なつかしい(笑)
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